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A社はある地方の名門企業。地域の総合生活企業として事業を多角的に展開してきた。
しかし、無理な事業展開と景気低迷が重なって、本体企業の業績が急速に悪化し思い切ったリストラクチャリングを余儀なくされた。グループ企業30社の業績はまちまちで、順調なところもあるが債務超過に陥っている会社も10社にのぼっていた。これらの会社はその地方の有力企業として経営を引き受けた会社が何社も含まれており以前から本体の支援なくしては存続できない状況であった。
本体の収益改善に目処をつけたトップマネジメントは、次に関係会社を再編整理しグループの財務体質を立て直さなければならないという思いが強かった。慢性的に赤字を続けている関係会社救済のため本体会社は資産売却や借入保証をしてきたが、売れる資産が少なくなりここで何とかしなければという危機感が強かった。
トップマネジメントは過去のしがらみで今まで手を付けられなかった関係会社を含めたグループ企業各社の位置づけと方向性を明確にし、グループの体質強化を抜本的に図る決意をした。
従来のいきさつにとらわれることがなく、社内から将来を嘱望されている課長クラス8名とコンサルタントでプロジェクトチーム(PT)を構成しグループの再編整理に着手した。
関係会社30社全てについて設立の経緯とねらい、設立以来どのような戦略をどのような意図で実行してきたか、その結果としての収支がどのように推移してきたのかを分析した。
主要な戦略には歴代のトップマネジメントが深くかかわっているわけであるが、失敗をあげつらったり犯人探しをするのが目的ではなく、実態を正しく認識し今後どのような手を打つべきかを考えるうえでの重要な参考にするための分析であることをプロジェクトチームや役員の間で確認した。
将来にわたってグループがどのような事業領域で事業展開していくかをPTとトップマネジメントでディスカッションした。従来は総花的に事業展開してきた。成功した事業もいくつかあるがうまくいかなかった事業も数々ある。
グループのコアコンピタンスが何か、独自性を発揮できるものは何かに焦点を当てて議論した。
現時点で収益性の良い企業だけ寄せ集めて現状追認型の事業領域を描くのでなく、将来どのような分野で生きていくかをディスカッションしドメインを描いた。
これを基準として、コア事業、ノンコア事業に分け、これと業績によって4象限のマトリックスに関係会社を区分類型化した。
業績不振企業各社から収支改善策と今後の事業見通しを出してもらいそれを基に各社責任者とPTメンバーで各社毎にどうすれば実際に収支を改善できるかを検討した。
各社は今までも必死になって業績回復努力をしているわけであるから妙手妙案がすぐに出るわけではないが、事業コンセプトを変えることによってコスト削減策がいくつか浮かんできた。顧客が誰で何を望んでいるのかを出発点に固定観念に捉われることなくゼロベースで検討した。コア事業の場合はオペレーショナルな収益力はあるが過去の過大投資が足枷になっているケースもあった。このような企業は過大な借り入れ負担から解放すれば正常な経営に戻れることが見込まれた。
業績不振に陥っている会社を仮に清算した場合の損失を試算した。整理損失には、バランスシート上の整理損だけでなく銀行借入の肩代わり、退職金要支給額、建物賃貸借契約解約金などあらゆるものを含む。清算するにしてもどのようなタイミングで行うのか、どの程度の資金が要るのかを見極めておかないと実際に清算出来ないためである。
関係会社の中にはグループ事業領域から外れているものの業績順調な会社が1社あった。グループ全体が業績低迷に苦しんでいるため給与賞与とも抑制気味で、このノンコア優良会社もこれに同調せざるを得なかった。社員の中には業績が良いのになぜ賞与が少ないのかという不満もあった。
経営の勘所が本体事業と全く違うため事業戦略や設備投資など重要案件について本体経営陣は適切な判断ができず後手に回った経営になっていた。
PTでは競争力や今後の需要動向、競合状況を綿密に調査し事業コンセプトを確認した結果、グループから独立しても十分経営していけると判断した。むしろグループの投資判断や人事制度などの枠組みに捉われない方がよいと言う結論になった。
当該ノンコア会社の現経営陣は出資に前向きであったため、金融機関の協力によりMBO(マネジメント・バイアウト)を実行した。これにより他の関係会社の清算資金を調達できたというメリットも本体にあった。
MBOや他社に売却する会社について売却価額の基礎となる企業価値を試算した。試算はDCF法による。
以上の検討により存続させる会社、清算する会社、MBOを含め売却する会社に区分した。方向づけの検討はPTメンバーだけでなく常務以上の役員全員が参加し、グループ事業領域との関係、各社の再建計画の妥当性、清算・売却の得失を再度確認し最終的な意思決定を行った。
それぞれの方向づけに従って誰が何をどういう順序でやればよいかという実行計画を策定した。
グループ企業の方向づけと併行して3ヵ年中期計画の中で資産売却や関係会社の清算・売却のタイミングをシミュレーションし資金収支計画、BS、PLを策定した。
従来は関係会社の赤字による資金不足を本体が資産売却で補填していた。この悪循環を断ち切る実行計画が出来、グループ再生への道筋がはっきりした。
実行計画に沿ってトップマネジメントが手分けして合弁関係会社の株主企業、労働組合、金融機関との交渉条件、落としどころがはっきりしたため交渉がやりやすくなった。
支援金融機関にとってもグループ全体の現状がはっきり分かり今後のグループ戦略が確立したことにより足並みを揃えて支援する土壌ができた。
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