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経営シリーズ

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グループ内組織再編における実行計画

No.640 | 2023年8月号

今月の視点


 事業の成長に伴い、M&Aや会社設立によってグループ企業の数が増えていくことがよくある。企業数が増えれば、企業間の業績の格差が生じたり、グループ内の相互連携の停滞や機能の重複による非効率が顕在化したりする可能性も高まり、それらは組織再編検討の契機となりやすい。

 グループ内組織再編においては、グループ組織の形の設計とその実現のための手続き、グループ組織が実際に動くために必要な制度やしくみなど、検討すべき領域が非常に広範囲に及ぶ。このため、想定した期日通りに進めるために綿密な実行計画を立てておくことが必要であると同時に、何よりも再編自体が目的にならないように、実現すべき本来の目的を見失わないことが肝要である。

 今月は、買収数年後、組織再編を実施した事例をもとに、グループ内組織再編の実行計画における留意点を考えたい。

1 グループ内組織再編の契機

組織再編は以下のように企業グループの経営上の課題を解決するための手段として実行される。

①事業規模の拡大、事業ポートフォリオの見直し、新たな事業の柱の確立といった課題を解決するために行う買収・提携の手段として

②事業運営の最適化・効率化を狙いとしたグループ内の会社の再編成の手段として

③事業再生や事業承継の手段として

特に、上記②の事業運営の最適化・効率化を狙いとした再編のニーズは、M&Aなどにより企業数が増えてきたグループで発生しやすい。M&Aの典型的手法としては、グループ外の会社の株式を取得してグループ企業として位置づける方法がある。株式取得でなく、合併によって直接グループ外企業との経営を統合する場合も見られる。しかし、一般的には資本関係のない会社の内実を把握することは難しいため、いったん株式取得によりグループ企業として位置づけ、会社の状況を把握した後、グループ事業戦略上最適な組織形態を見極めた上で、改めて再編行為に踏み切るというケースも少なくない。

こうしたM&A後のグループ内組織再編の場合も含め、組織再編は一般的に次のようなステップで進行する。すなわち、まず、本項冒頭で述べたような事業方針の見直しや組織運営上の課題から、組織再編の必要性が認識される。次に、最適な組織形態が検討され、その組織形態にするための再編手法を選択し、実行となる。そして、再編後の組織形態において事業を推進するためのしくみや制度の見直しを行う。

図1 組織再編のステップ

組織形態を考える視点としては、事業の分離・統合、持株会社体制の採用といったことが考えられる。例えば、買収によって同業を営む会社が増え、事業の統合によって効率的な運営の実現を企図するケース、成長した事業部門を切り離して事業会社として更なる業績拡大を企図するケース、持株会社の設立によって事業ポートフォリオ管理を企図するケース等である。

最適な組織形態が決まれば、その形を実現するための手法を考える必要がある。会社法で規定されている組織再編手法としては、合併、会社分割、株式移転、株式交換、株式交付、事業譲渡、株式譲渡、現物配当等が挙げられる。これらの手法を組み合わせて目指すべき組織の形を実現することになる。どの手法を採用するかについては、再編コスト(所要期間、税金、人手等)の比較によって選択することになる。

組織形態が変われば、しくみや制度も新しい組織形態に合わせた見直しが必要になる。見直しが必要になる可能性のある領域は多岐にわたる。事業計画、経営機構、拠点・組織・人員体制、人事制度、会計制度、業績管理制度、業務・情報システム等である。これらの領域ごとに、現状把握から始まり、新しい組織形態におけるあるべき形の検討、あるべき形を実現するための課題の洗い出し、課題解決策の検討と実施といった手順での検討が必要になる。

目指す組織形態に応じて、上記課題領域の取りあげ方には濃淡が出る。合併により2社が1社になる場合と、株式譲渡による子会社化のような会社の統合を伴わない場合とでは、検討の範囲も変わってくる。

次項では、これら一連の検討を行うことになった事例として、株式の取得による買収後、数年を経て合併による組織再編を行ったA社グループの事例を紹介する。

2  A社グループの事例

(1)再編にいたる経緯

A社は、 X事業を営む県内最大手の企業である。5年前に、 業績不振に陥った同業のB社を救済するため、株式を取得して完全子会社化していた。子会社化の後も、 両社が独立して競争することによって業績を向上させる方針をとってきた。しかし、 中期経営計画に掲げられた県内シェアのもう一段の拡大を実現するために、組織再編が検討された。合併による経営統合により創出された余剰人員をシェア拡大の対象エリアに配属してシェア向上を図るというストーリーである。同時に、 A社の保有する物流機能会社とB社の保有する物流機能会社の合併も企図された。

こうして、A社とB社の合併及びその機能子会社同士の合併の是非を検討するプロジェクトを組成し、合併による営業や業務の効率化と余剰人員創出効果を確認し、合併を実施するフェーズに入った。合併の期日は、1年半後に定められた。

(2)実行項目の洗い出しと日程計画立案

再編実務を円滑に実施するため、実行項目とスケジュールをあらかじめ抜け漏れなく洗い出しておくことが大切である。
A社では、計画立案フェーズと実行フェーズを分け、まず、前者における検討体制を構築して再編プロジェクトを開始した。

検討体制としては、経営企画部メンバーが再編プロジェクトのPMO(Project Management Office)を務めた。このPMOが再編プロジェクト全体のスケジュール管理を担った。また、再編において検討すべき領域は多岐にわたるため、領域ごとの分科会を設置し、それぞれの領域における課題の洗い出しと解決のための検討項目・実施項目・実施スケジュールを検討し、実行計画としてまとめた。分科会は、営業分科会、本社業務分科会、人事分科会、物流分科会の単位で設置した。物流機能会社の合併に係わる計画立案は物流分科会で検討することとした。

これらの分科会は、実行計画立案のための分科会であり、再編計画の社内開示後、実行段階に移る際には、実行のための分科会を改めて編成することとした。計画立案フェーズにおいては、噂が不用意に広まらないように、分科会のメンバーには部長レベル以上で社内において影響力を持つ主要な社員を任命し、関係者を限定した。実行フェーズに入るタイミングで全社に情報を開示し、広く社員を巻き込んで実務を進める想定で検討を始めた。

組織再編の実行計画にかかわる課題領域は、大きく9項目に分類され、分科会と課題領域の対応は表1の通りである。

なお、合併後の会社の機関設計と役員人事は組織再編において重要な課題のひとつであるが、本再編プロジェクトとは別に検討された。

表1 分科会と課題領域

①合併後の事業戦略

営業分科会では、県内シェアをもう一段拡大するという中計方針を、合併後の組織で実現するための事業戦略を検討する計画を立案した。

定量目標の設定、社内外の現状分析、現状分析から認識されるシェア拡大のための課題抽出、課題解決のための施策検討、実施計画の策定といった検討項目を実行計画に織り込んだ。

②取引先窓口の統合

同一事業を営む2社の合併であったため、両社に共通の得意先が存在した。窓口を一本化することになるが、取引条件が両社で異なる場合が問題になる。取り扱う商材が異なれば、取引条件を異なるままにしておく選択肢もあるが、通常、取引条件統一の交渉が必要になる。

仕入先に関しても、得意先の集約と同様の問題が発生する。2社が、同一仕入先から仕入を行っている場合、合併することで購入量を増やせるため、仕入条件の改善を交渉しやすくなると考えられる。二社が同一商材を異なる仕入先から購入している場合には、どちらかに仕入先を集約することで、購入量を増やすことができる。しかし、集約すると片方の仕入先からの購入がなくなってしまうため、仕入先との関係を継続するために集約しないという判断もある。

いずれにせよ、実行フェーズにおいて、取引先ごとに交渉を行う必要がある。計画立案フェーズにおいては、得意先及び仕入先の洗い出しを実施し、重複する取引先を把握した上で計画を立案した。

③業務・情報システム統合

合併後の業務を設計するための基礎資料として、合併する両社の全部署に対し、各分科会が分担して業務の洗い出しを依頼した。どのような業務を誰が実施しているのか抜け漏れのないように棚卸しを行い、両社の業務項目の差異を明らかにすることが目的であった。作成した資料は、次の実行ステップで、担当者同士が合併後の業務を設計する際の参考資料とする。

業務項目の違いが比較的大きかったのが、両社のシェアードサービス部門であった。シェアードサービス部門は、両社ともに経理部門の下部組織として位置づけられていた。A社では、経理業務と給与計算をその対象にしているところ、B社では、それらの業務に加え、受発注入力や売上計上業務といった営業業務関連の実務も担っていた。合併後のシェアードサービス部門で、現状では対象となっていないA社の営業業務関連の実務も引き受けるかどうかが検討課題として認識された。

④合併後の各部署の組織体制

合併後の業務が明らかになれば、それを遂行するための組織体制の検討が必要になる。同業であるため、原則として存続会社の組織を踏襲し、存続会社にはない業務の受け皿をどう設置するかということが検討の中心になると想定された。実際の組織体制の設計は、前述の業務・情報システム統合の検討結果を受けて着手することになる。

計画立案段階で改めて問題になったのが、工場の位置づけであった。B社は自社工場を保有するが、A社は加工子会社を持ち、 そこが工場を保有していた。このため、 そのままA社とB社が合併すると、A社が工場を保有することになる。A社は工場事業を事業目的としていなかったため、自身が工場を保有することを是としなかった。

このため、A社と合併すると同時に、B社が別に所有している加工会社C社に工場とその社員を移管するスキームを採用することとなった。両社の工場従業員の給与水準に大差はなく処遇も変えずに移行できそうであることが見込まれたこともこの判断の後押しとなった。検討の際、親会社B社から子会社C社への転籍が社員のモチベーションに与える影響が懸念されたが、合併後も担当してもらう業務内容は変わらないこと、処遇も変わらないことなどを丁寧に説明することで対応することとした。

図2 工場移管後の合併

⑤拠点の統合

A、B両社とも同じ事業を営んでおり、販売エリアもほぼ県内全域にわたるため、営業拠点の重複も多かった。このため、取引先窓口の統合検討後、営業拠点の統廃合の検討を進める計画とした。

物流に関しても、県内の物流の要衝には、両社の拠点が存在する。これまでは、お互いが個社最適で物流拠点を展開してきた。合併後は、前述の取引先窓口統合後の姿を前提にしたときの最適な物流拠点の設計が必要になる。合併後の拠点配置や在庫品目と数量を設定し効率的な物流体制の構築が必要になる。

具体的な検討は、前述の取引先窓口の統合の検討結果を受ける形で、実行フェーズでの検討項目として計画した。

⑥就業条件・人事制度の統合

合併するA社とB社は長年競合関係にあった。5年前の買収後も、お互いが自社の業績を第一に考えて独自に事業を展開してきた。その2社が合併するため、不安な気持ちを抱いている社員が両社に存在することは想定された。人事分科会では、合併後の就業条件・人事制度のあり方について議論を行った。

今次再編においては、いったん、合併直後には複数制度を併存させ、1~2年かけて人事制度を統合する選択肢も出された。ただ、買収後5年を経過し、顧客からもなぜ合併しないのかと問われる状況にあり、合併直後からグループ一丸となって事業を推進していく気持ちで社員が働くためには、合併と同時に就業条件・人事制度を統合することが必須と考えられた。人事分科会では、まず、両社の比較から始めた。経営統合から5年が経過しているとはいえ、お互いの就業条件はよく分かっていなかった。勤務時間、休日、給与制度、給与水準等々、差異を明らかにしていった。

当初、最も懸念されていたのは、A社は全国展開している会社だが、買収したB社は県内のみに展開する企業であることから発生する課題であった。A社には転勤を伴わない勤務地限定社員と全国を異動範囲とする全国社員の2種類しかなかった。移動範囲を県内に限定する社員区分は存在しなかったため、
B社の社員をどのような社員区分で処遇すべきかが課題になるであろうと想定された。

現状の比較を続けていくと、それ以外にもB社には存在するがA社に存在しない項目が明らかになってきた。B社には工場勤務者を処遇するための現業社員の職群が存在していたが、
A社は子会社が工場を保有し、親会社での現業社員の雇用はなかった。これら以外にも、有給休暇の付与のルールや忌引き等の特別休暇の付与基準などに細かな差異が存在した。

就業条件・人事制度統合の方針として、合併後の会社においては存続会社の制度を運用し、制度改定は必要最低限にすることを確認した。上述した異動範囲を県内に限定する社員区分の導入を含め、差異をどのように吸収するかという課題について、制度見直し、個人別のあてはめ試算、労使間での協議などの項目を計画に織り込んだ。

⑦契約承継への対応

吸収合併などのように、各種契約書を承継する場合、契約書によっては、再編時の契約の扱いについて規定されているものもあるため、法律の専門家と相談しながら対応することが求められる。PMOは、各分科会において、それぞれの業務範囲における契約書の洗い出しと内容の精査を実施することを求めた。いわゆるチェンジオブコントロール条項(経営権・支配権の変更・異動が発生した場合に、契約内容に制限を設けたり、もう一方の当事者によって契約解除を可能にしたりする条項)の規定の有無とそれが存在した場合の契約書上の規定をリストアップした。同意書を交わすことが規定されている先に話をしに行った際、取引条件の交渉に発展してしまうケースもあるようなので、取引先ごとに慎重に対応方針を検討する必要がある。

洗い出された契約書を、契約主体の組織に引き継ぎ、弁護士に相談しながら、取引先ごとの対応を検討する計画とした。

⑧許認可の承継と新規取得

事業を営むために許認可が必要な業種においては、組織再編にあたって、許認可の承継や新規取得の手続きが必要になる。今次再編では、同じ事業を営む会社間での承継であったものの、事業所として認可を受けている場合は、消滅会社において廃止を届け出て、合併後の会社において新たに事業所としての認可を受ける必要がある許認可も存在した。

これらの項目も含め、各分科会において、事業を継続する上で必要な許認可を洗い出し、必要な対応を明確にして、計画を立案した。

また、許認可に加え、合併後も使用を継続する商標の承継対応も計画に織り込んだ。

⑨会社法上の再編手続き

法的手続きに先立ち、計画立案後の実行フェーズに移るタイミングで、立案された計画を承認する取締役会を設定した。取締役会承認後の取引先への案内及び社員への説明も重要な実行項目として設定した。取引先ごと、従業員の所属部署ごとに、情報を伝達する方法や担当者などを具体的に検討した。

A社とB社の合併及び物流子会社同士の合併のそれぞれに関する再編の手続きに関しては、吸収合併に関する取締役会決議から始まり、効力発生日後の登記に至るまでの全体スケジュールをPMOで立案した。立案したスケジュールは、組織再編の全体像を説明する資料とともに、弁護士に確認を依頼した。弁護士確認後、各手続きで使用する書類のドラフトを一通り作成した。ドラフト作成段階において、判断に迷うことが出てきた場合は、法律、税務、会計などの専門家に問合せながら、作業を進めた。

取締役会決議から効力発生日までの間には、次のような一連の手続きが必要になる。

  •  事前開示書類の備置
  •  株主総会決議
  •  債権者保護手続き
  •  株主への通知
  •  株券等提出公告 等

このうち、株主総会決議は、通常必要とされるが、今次再編においては、簡易合併及び略式合併に該当することを弁護士に確認した上で、当事会社両社での株主総会を省略することとなった。グループ内組織再編であっても、条件が整わなければ、吸収合併に関する株主総会決議が必要になるため、法律専門家に相談しながら計画することが求められる。

効力発生後に必要な登記、事後開示書類の備置、社会保険や税務に関係する行政諸機関への届け出についても計画項目として織り込んだ。

また、諸規程の改定については、PMOの所管として実行計画に組み込んだ。

⑩その他

会計制度、情報システム、人事総務関連の庶務に関して、勘定科目の追加、人事台帳への追加、引越の準備、諸機関への届け出などの、合併による人員増や部門増に対する必要な対応の実行計画は、本社業務分科会で立案した。また、公正取引委員会の対応はPMOの実行項目とした。

3か月を費やして立案した実行計画は、取締役会で承認され、実行のための分科会を組成し、実行フェーズへと進むことになった。

3 グループ内組織再編の実行計画策定における留意点

(1)組織再編の目的を明確にする

グループ内組織再編は、グループの経営資源の構成を大きく変えるようなM&Aと比べれば、グループ内の企業のくくり方以外に何が変わったのかが見えにくい。それだけに目的を明確にすることが強く求められる。再編自体が目的にならないように、実現すべき本来の目的を見失わないことが重要である。

A社グループの事例では、同一事業を統合することによる効率化を目的に掲げたが、一般的に、グループ内組織再編の目的としては以下のようなことが挙げられる。

  •  同業者の統合による効率化
  •  グループ組織形態の見直しと権限委譲による意思決定の迅速化
  •  事業単位の業績責任の明確化
  •  間接業務等の集約によるグループ全体でのコスト削減

明確にされた目的は、再編実行計画を検討する際の判断のよりどころになるとともに、再編効果を測定するための指標設定の際のよりどころにもなる。

(2)再編目的に最適な組織形態を考える

明確になった再編目的を達成するために最もふさわしいグループ組織の形態を決定することが、計画策定の具体的な第一歩となる。

A社グループの事例は、営業や業務の効率化を狙った同業者同士の経営統合であった。グループ内に同業者が並列していることによる非効率の解消により、更なる業績向上が目指せるという認識にもとづく策であった。

合併による経営統合に限らず、グループ内組織再編には次のような形態を目指す再編も多く見られる。

  •  持株会社体制の構築
  •  事業再編のための事業部門移管(統合・分離)
  •  地域や事業を考慮した中間持株会社体制の構築

それぞれのグループ企業の置かれている状況は異なっているため、どのような組織形態が優れているかについての一般論を述べることは難しい。各グループ企業がそれぞれの経営環境の下、再編目的を実現するための最適な組織形態はどうあるべきかに、とことん知恵を絞るしかない。再編の手法以前に決めるべきことである。

(3)目指す組織形態実現の手法を組み立てる

目指す組織形態を実現するための再編スキームは、会社法で規定される合併、会社分割、株式移転、株式交換、株式交付、事業譲渡、株式譲渡、現物配当等の手法の組み合わせによって構成する。最適な手法を選ぶ際の評価基準は、再編に係る対価の額及び種類、手法を実行する際に必要となる期間や手間、繰越欠損金利用の制限有無、税制適格性などの項目が考えられる。

A社グループ内の統合では、 A社から見ると子会社と孫会社の関係にある物流2社を合併する前に、兄弟会社の位置づけにすることによって法人税法に規定される適格合併の形態に該当するような再編スキームを設定した。これは、子会社と孫会社のままでの合併では適格合併に該当せず、法人税の課税が発生し、繰越欠損金の引き継ぎも不可能になることへの対処であった。

図3 兄弟会社化後の合併

再編手法の選択は、複数の手法の組み合わせが必要になるなど一定の知識を必要とする。目指すべき組織形態を実現するためのスキーム選択には、そうした知識を持つ専門家への相談が不可欠である。相談することで、可能な節税効果の享受や手間と時間のかかる手法の回避が可能となる。

(4)綿密な実行計画を立案する

グループ組織再編は、グループ組織の形態を変更し、それに合わせてグループ内の経営資源の構成を変える行為であるため、検討課題が広範囲に及ぶ。対応に期間のかかる課題もあり、組織再編を完遂するためには行動に移る前にできるだけ綿密に計画を検討する必要がある。

グループ組織の形態ということでは、会社法をはじめとする関連法令に則って手続きを進めることでその効力を発する。グループ組織の形態が変わると、事業継続のために、対外的にも対内的にも変えなければならないことが発生する。

例えば、対外的な面では、許認可や届け出の必要な事業の場合、再編に際し監督官庁などへの手続きを伴うことがある。申請から認可が下りるまでに数か月を要するものもあるため、必要な手続き内容と期間を計画に織り込まねばならない。A社では、許認可を承継するために一般貨物自動車運送事業の合併認可申請が必要であった。認可を得るためには、体制の整備はもとより、承継会社の認可状況によっては役員の法令試験の合格も要件となっている。役員の法令試験は奇数月のみ実施されるといった条件もある。一般貨物自動車運送事業に限らず、どのような手続きが必要になるか調査し、十分な準備期間を確保しなければならない。

また、事業を継続するためには、制度やしくみ面だけでなく、取引先や従業員など利害関係者との円滑な関係を維持することも重要である。利害関係者に対しては、タイミングを逸することなく、必要な情報を正確に伝えることが重要である。A社の事例では、取締役会決議の直後に、組織再編を予定していること及び今後の対応の検討を予定している旨を取引先及び従業員に知らせ、組織再編の効力発生日までに協議を重ねる計画を立案した。

実行計画立案に関しては、計画の立案者でなくとも、計画を手にした当事者が抜け漏れなく実行できるレベルまで計画を展開しておくことが重要である。抜け漏れが生じたため、事業が継続できなかったり、組織再編自体が無効になったりすることのないようにしなければならない。そのために、課題領域ごとの分科会を編成し、複数人の目でチェックしながら計画を立案することも有効である。また、立案した計画を専門家にチェックしてもらうのがよい。特に、組織再編の手順や必要書類、許認可への対応などは弁護士、司法書士といった専門家への相談が不可欠である。

(5)影響力のある社員を計画策定段階から巻き込む

グループ内再編においては、その目的を実現するために、社員の働き方にまで変化を及ぼす必要があることが多い。そのため、再編に前向きに取り組む意識を持った社員が一人でも多い方が良い。

例えば合併の場合、消滅会社の社員にとっての変化は特に大きい。所属する会社は解散することになり、合併に伴う業務の効率化によって他部署で就業する社員が出てくる。以前と同じ部署で就業することになった社員にも、使用する情報システムが存続会社のシステムに変更されるといった変化が生じる。これらの変化に不安を覚え、退職の道を選択する社員が出る可能性もある。

グループ再編に対して社員が否定的なとらえ方をする事態を招かないために、社内で影響力のある社員に計画段階から参画してもらい、計画に対する信頼感を社内に醸成することが必要である。計画策定段階からの参画が難しい場合でも、計画実行の段階では、推進の中心役に据えることが望ましい。計画の円滑な推進は最後は人にかかっている。