JMS 日本経営システム

経営シリーズ

  • 企業理念浸透・組織風土改革

協同作業®への思い

No.600 | 2020年4月号(創立50周年記念)

今月の視点

日頃ご愛読賜っている「経営シリーズ」は、日本経営システム株式会社が実施したコンサルティングを題材に、経営改善のヒントにしていただけたらと、創立以来毎月欠かさず発行してきたものです。
おかげさまで、当社は今年創立50周年を迎え、経営シリーズも600号をお届けすることとなりました。
お客様との徹底した協同作業を追求して参りました当社にとりまして、 まさにお客様に育てていただいた50年でございます。

今月は、創業当時から目指してきた「協同作業」への思いと、実践の中で得られた貴重な行動指針である「コンサルタント心得」を改めてかみしめ、引き続き一層お役に立てるコンサルタント会社を目指して、次の50年を歩んでいく決意を新たにいたします。

協同作業®への思い 

 五十余年の昔、経営コンサルタントの仕事を始めるに当たり、業界調査で最初に訪問したフランスのコンサルティング会社で、「対話の果実」という耳なれない言葉を教えられました。
 優れたデザイナーは、着心地がよく着映えのするスーツになるように、顧客との対話を繰り返しながら、細心の注意を払って寸法をとって仮縫いを繰り返す。たとえ世間で評判の高いデザインであっても、それを押し付けたりはしないということでした。
 良いコンサルタントも一方的に指導するのではなく、顧客と協力して仕事を進めるものだと教わったことは大きな収穫でした。
 爾来、注文仕立てのスーツを丁寧につくるようにコンサルティングを行う、「協同作業®」という考えを徹底して追求してきました。
 日本経営システムの特徴はと聞かれた折には、「顧客との徹底した協同作業®です」と躊躇なく答えています。

 日本に本格的な経営コンサルティング事業を確立したいとの想いで黎明期に創業し、歩んできた道は試行錯誤の繰り返しでしたが、「協同作業®」という一本の道だけは踏みはずすことはありませんでした。
 これまでの50年で、仕事を通じてご依頼先から教えていただいたことは数限りなくございます。私達にとっては、それが「協同作業®」から得たかけがえのない宝となっています。

 「協同作業®」は、相手の気持ちまで知って初めてできることです。しかしながら相手の気持ちというのは、簡単にわかるものではありません。
 わかるはずがないと思うことが出発点だと戒めています。謙虚にならざるを得ません。
 共に手足を動かし、共に考えながら、いちずに求めなければなりません。手をそろえてはじめて心もそろい、協同作業®の入り口に立てると思っています。

 せめて謙虚にという姿勢は、ご依頼先の課題を、自分事として執念をもって考える大切さと大変さから学んだ、誠実であれという教訓とともに、役に立つコンサルタントであるための不可欠の要件だと考えています。

長所に光を

 経営コンサルタントの重要な役目は、顧客の長所に光をあてることだと思っています。
 企業は長所を伸ばすことによって発展する。たとえ現状が欠点だらけであろうとも、すべてをありのままに受け入れ、今できることをおろそかにせず、ひたすら長所に光をあて、徹底してそれを伸ばしていけば、いつか必ず事態は変わる。活力が続けば会社は必ず良くなる、という信念をもってコンサルティングに当たっています。

 灯台もと暗しということもあるように、欠点は目につきやすいものですが、長所はかくれていて目につかないものです。
 ひたすら目にみえない長所を探してそこに光をあて、それを伸ばす手だてを顧客と考える。
 欠点をとがめだてようなどとは露思わない。欠点あってこその長所とさえ、ひそかに考えています。

 人の集まりである会社は、何といっても生きもの。この思いは日ましに強くなっています。

コンサルタント心得 ─ 経営を変えるもの ─

(1) 誠実な人であること。コンサルタントは話をすることよりも人の話を聞くことにこころを配らねばならない。

 コンサルタントはラインではない。社長に代わって指示する人ではない。さらにまた学者でも、評論家でも、教師でもない。まして説教をする人ではない。

 経営者のために意思決定の準備をする人である。

 口よりも耳を使って仕事をする。仕事を通じて誠意を態度で示す人である。

 たとえ何千人、何万人のかかわる大きい仕事であっても、一人をおろそかにしない。小さいものをおろそかにしない。「神は細部に宿り給う」という。
 思いをこらせば、消えゆく一粒の朝露に燦然たる全宇宙をみることもある。

(2) 目的を知らず、たしかめず、具体化せず、定量化しないで行動を起こすのは無意味である。

 具体的な目的がなければ、具体的な発見はない。

 問題の把握が漠然としていると、対策もまた抽象的なものとなり、役に立たないものになる。

 コンサルタントはいつも目的をたしかめ、それをひたむきに追い求める。

 事実は自ら語るという言い習わしがあるが、それは間違っている。事実というものは問いかける人にのみ自らを語る。
 目的をなくして発見はない。豚は真珠をみつけない。

(3) コンサルタントの仕事は教えることではなく、学ぶことから始まる。学ぶとは「およそ幼児(おさなご)のごとくに」と述べられているような、すなおでかつひたむきな態度をいう。

 コンサルタントの仕事は顧客の実状から離れては成り立たない。

 コンサルタントの仕事はいつもまず顧客に学ぶことから始まる。現場のことがわからないのに、その話を聞きもしないで、軽々しく意見を述べてはならない。

 その仕事をほんとうに知っているのは、いついかなる場合にも、そのとき現場で働いている人である。

 コンサルタントがいつの間にか、現場の人よりもその仕事をよく知っていると思うのは間違いである。よく知 って批判し、説教しようと思うのは、一番いけないことである。それはコンサルタントの仕事ではない。

 コンサルタントであるかぎり、現場の仕事の専門家ではありえない。

(4)コンサルタントはいかなる場合にも人の批判をしない。ほめることも、けなすこともしない。

 コンサルタントを支えているのは公正な第三者という信頼である。コンサルタントが人のうわさ話を始めると、たちどころにそれは崩れ去ってしまう。

 けなすこともほめることも、ともによくない。

 けなすことはよくないが、ほめることは差し支えなかろうと思っている人があれば、それは大変な思い違いである。

 人の批判やうわさ話は厳につつしむ。

(5)空理、空論ではなく、事実に基づいて深く考える。それがコンサルタントの役割である。

 コンサルタントは完全なものをつくろうとして際限なく議論をし、結局何もしないという態度はとらない。

 およそ人間の仕事に完全なもの、絶対に正しいというものはありえないということをよくわきまえている。

 何かを始めようとするとき、何がしかの未知数、不安はつきものである。しかしどのような未知の問題も、それに向かって行動を起こしたものにとっては、すでに未知ではない。

 現場を離れると人はえてして空理、空論、抽象論におちいり、際限なく議論をする。そのようなとき、思いき って現場の具体的な事実の分析に引き戻すのが、コンサルタントの役割である。 

(6)辛抱強く待つということ、それは誠実さとともにコンサルタントに不可欠の特性である。

 コンサルタントはいつも誰が実際にその仕事をすることになるかを知っていて、新しい仕事を準備しなければならない。

 新しい仕事はコンサルタントが現場の人々に代わって決心するのではなく、現場の人々がその気になったとき始めて実行される。

 たとえ善意からであっても、現場の人々の気持ちにそむいて、現場の人々がまだその気になっていないのに、自分の信念だけで仕事を進めてはならない。

 「それがたとえ迷信であっても、それは信者自身に取り除かせるべきであり、はたのものが取り除くのは間違いである」

(7)あら探しをせず、欠点をとがめだてず、ただひたすら長所をみつけて光をあて、それを思いきって伸ばす。それこそがコンサルタントの仕事である。

 企業にとって活力ほど大切なものはない。

 長所をみつけて三重丸をつけ、力を合わせてそれを伸ばそうとするときの明るくはずんだ気持ち、それが何より大切な活力の源泉である。

  欠点は目につきやすいが、長所はかくれていて目につかない。灯台もと暗しということもある。それのみか、ほんとうに大切なものはもともと目にはみえないという。

 長い坂を登りきったとき、欠点あってこそ恵まれた長所としみじみ思うこともある。

 ひとの話はすべてすばらしいと思って聞く。目を輝かせて聞く。詳しく聞いてから感心したのでは間に合わない。

(8)コンサルタントの仕事は関係者との協同作業を離れては成り立たない。その成果は文字通りの意味で対話の果実である。

 関係者の意見や現場の事実に謙虚に耳を傾けて共に考え、手をたずさえて納得づくのプランをつくり上げる。対話の中から豊かな果実を実らせる。

 コンサルタントの仕事はたとえ技術がすぐれていても、たとえ知識が豊かであっても、さらにまたたとえ経験が深くても、そこに関係者との協同作業が欠けていたら、デスクプランにとどまって、何の役にも立たないものになる。

 たとえ才能がすぐれていても、たとえ親切な行いをしても、「そこに愛がなければ何になろうか」
 
 たとえ見事なプランができ上がっても、そこに協同作業®がなければ何になろうか。

(9)コンサルタントは仕事が終ったあとに自分の名前を残そうとしない。目立つコンサルタントはほんとうに役に立つコンサルタントではない。

 でき上がった仕事はすべて対話の果実であり、協同作業®の所産である。関係者のすべてがそれぞれに力を出し合ってこそまとまったものである。コンサルタントひとりの仕事ではない。

 現実には関係者のすべてがひとしく力を出し合わないこともあろう。しかし誰か一人でも十分に力を出さない人がいたら、それはコンサルタントのやり方がよくないのである。

 他の人よりコンサルタントのはたらきが目立つようなら、それはコンサルタントのやり方がよくなかったのである。目立つコンサルタントはほんとうに役に立つコンサルタントではない。

 経営を変えるもの、それは知識でも経験でも手法でもない。目にみえないこころのはたらき、やさしさと辛抱強さである。

徹底した仕事のスタイル

1.「 協同作業®」とは、顧客の改善目的を的確に理解して共有し、それを達成するための効果的な具体策を練り上げることをいう。

1.協同作業®の成否を左右するのは、「検討テーマの選定」と「課題形成」である。検討を始めるに当たって、それが顧客のニーズ、思いを的確に反映したものとなるように慎重に選定、形成する。

1.検討の全過程を通じて、相互信頼に基づく徹底した話し合いを基本とし、「ファクトファインディング」に徹して既成概念にとらわれず、「公平、中立の姿勢」を失わない。

1.検討過程では、顧客の主体的取り組みを重視し、トップマネジメントから現場に至る関係者との協同作業を行い、確実に実施され「成果を生む改善策」を練り上げる。

 私達は、こうした協同作業を徹底させるために、仕事の型として、他の仕事とかけ持ちをしないでご依頼先と一緒に専念する「完全専従方式」をずっととっています。
 また、完全専従の実をあげるために、基本は、お客様のところに常駐し、経営者から現場に至るまで関係者全体を巻き込んだ検討を心がけています。
 こうしたやり方は、経営の意思決定のお手伝いだけでなく、実施可能な具体策を立案する上でも、ご評価いただいている点です。

 日本経営システムのコンサルティングスタイルの基本はこれからも変わりませんが、時代の要請に、一層応えられるよう深化させて参ります。

次の50年

 何としても、いつの日かご恩返しをしたいという思いが仕事への情熱をかき立て、少しでもお役に立ちたいという気持ちを燃やし続けたこの50年でございました。
 次の50年も、お客様のニーズに真摯に向き合い、成長のお手伝いを申し上げたいと、決意を新たにしております。

 これまで同様に、ご支援を賜れば、まことに幸甚に存じます。